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なぜ全員にPCR検査をしてはいけないのか?コロナ検査を算数で検証してみる

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PCR検査を誰にでも受けられるようにしてほしい」、

「なぜしないのか」、

といった意見をいまだに耳にします。

しかし、無症状、軽症の人でも受けたい人全員にPCR検査を実施することは、

無意味であるばかりか、

医療崩壊、社会混乱を助長することにしかならないことは

私にも推測できます。

 

それがなぜなのか、算数を使いながら一緒に確かめてみたいと思います。

小学生には難しいかもしれませんが、

使う計算は小学5年生レベルです。

 

ちなみに、私は以前、医学ではありませんが、

微生物関連の研究者をしていました。

大学と企業で10年ほど研究をして、

学会発表は数十回、論文も出していましたので、

専門家の端くれといってよいかと思います。

 

急に有名になったPCRですが、

PCR自体は生物分野の研究ではよく使われるもので、

私も扱ったとこがあります。

 

現在、新型コロナ感染の判断材料に

このPCR検査が用いられています。

これが感染した新型コロナウイルス自体を検出するものだと

思っている方が多いようですが、それは厳密に言うと誤解です。

これをちゃんと説明するには、

高校レベル以上の生物の知識が必要になるので省略します。

(日本語の文献でちゃんと説明しているものが見つからないのですが、

例えば、検査工程はこうなっています。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/laboratory-test/reference/9559-2020-04-14-10-09-54.html

国立感染症研究所HPより)

 

PCRに限らずですが、ある手法を検査に使った場合、

原理的に一定の確率で間違いが起こります。

医療分野では、その精度は「感度」「特異度」という値で表されるそうです。

 

感度:感染者のうち陽性と判定される割合

   (感染者の中から感染有と見抜ける確率)

特異度:非感染者のうち陰性と判定される割合

   (非感染者を感染有と間違わない確率)

 

この数値が100%に近いほど精度が高い検査だと言えます。

新型コロナ用PCRについては、確定値はまだないようですが、

高く見積もっても、感度70%、特異度99%だと言われています。

 

この検査を”みんな”に実施したら何が起こるのか?

検証してみましょう。

 

長野県の人口は、約205万人です。

 

県内感染者数は現時点(4/24)で約60人(=感染率0.003%)。

実際はもっといるだろうと考えて、

例えばこの20倍の1200人の感染者がいる(=感染率0.06%)と仮定します。

そこで、県民のおよそ2人に1人、

つまり100万人にPCR検査を実施した場合を考えてみましょう。

この仮定の下では、検査を受けた100万人中、

実際の感染有は約600人、感染無は999,400人と考えられます。

これらの数字を元に、次の表の各人数を計算して、

表を埋めてみてください。

 

 

  感染有

  感染無

  合 計

PCR陽性

  a

  b

  a+b

PCR陰性

  c

  d

  c+d

  合 計

  600

 999,400

 1,000,000

 

aは、感度70%だから、

 600×0.7=420人。

dは、特異度99%だから、

 999,400×0.99=989,406人。

 

これを表に当てはめて完成させると次のようになりました。

 

 

   感染有

   感染無

   合 計

PCR陽性  

    420

     9,994

     10,414

PCR陰性

    180

  989,406

    989,586

 合 計

    600

  999,400

 1,000,000

 

そして、ここから驚くべき結果がわかります。

100万人にPCRを実施すると、陽性と出るのが10,414人です。

このうち、本当に感染しているのは420人です。

割合にすると420÷10,414=0.0403・・・。

4.03%です。

陽性になったにも関わらず、

そのうち本当に感染しているのは、たったの4%なのです。

96%ハズレです!

それでも、この検査を受けたいと思いますか?

 

感染してもいないのに陽性(偽陽性)になった9,994人。

この約1万人の人に対しては、

最低2週間は隔離・監視される必要があり、

そのための施設を用意しなければなりません。

医療従事者の方々もそれに振り回され、

本当に治療が必要な患者さんに手が行き届かなくなりかねません。

一方、本当は感染しているのに陰性(偽陰性)となる人が

180人もいることになります。

このような状況は皆が望むものではないはずです。

 

では、この検査に意味がないかというと、決してそうではありません。

このような結果になるのは、”みんな”にPCRをしたからです。

逆に、母集団に対して、真の感染率が十分に高い場合は

この検査が意味を持ってきます。

つまり、濃厚接触者など感染の可能性が高いと考えられる人に限って検査を行えば、

当たる確率はグッと上がります。有効に機能するのです。

その場合は、上の表のどこが変わって、正しい判定の確率が上がるのか、

ぜひ考えてみてください。

 

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