Soumeijuku’s Blog

SOUMEI塾の風景

宿題があれば勉強の習慣がつくのか


近年は小中学校の宿題が減ってきています。

学校や学年によっては、宿題が何もないとこともあります。

昔の「ゆとり」ではないと思いますので、

先生方の負担を減らすのが主たる目的でしょうか。

 

それもあって

「うちの子、家でぜんぜん勉強しないけど大丈夫?」

と心配される保護者さんも多いかと思います。

宿題がないから何もしない。

逆に宿題があれば、勉強をするのではないか、

勉強の習慣がつくのではないか。

と考えるのは自然な流れだと思います。

 

しかし、残念ながら、

宿題の学力向上への効果はほぼない、

あるいは、かなり限定的だということが、

いくつかの研究論文によって明らかになっています。

 

原理的に考えてもその結果はうなずけます。

それは第一に、

子どもたちにとって宿題は、

「やらなければいけないもの」

=「やりたくないもの」

=「面倒なもの」

=「苦役」

であるから。

そして、

内容も、ワークの〇~〇ページをやってくる、

漢字の書き取りをやってくる、

英単語を3回ずつ書いてくる、など、

それらは考えること、覚えることにはなっておらず、

たいていは単なる作業で終わることになります。

結局、ほとんどの子にとって宿題は、

無意味か、むしろ、勉強嫌いを助長するという害の方が

大きくなっています。

 

宿題を「やらなければいけないもの」と捉えている限り、

サボる子は、なんとかサボる方法や、

やらない、やれない言い訳を探し出します。

ときには体調を悪くしてでも。

 

もし逆に、サボらずやってくれたとします。

すると、子どもは一定時間机に向かっていることになるので、

勉強の習慣がついたように見えることもあるでしょう。

しかし、これは「勉強をする習慣」がついたというより、

「宿題をこなす習慣」がついただけということがほとんどです。

 

子どもたちに宿題を出すと、

本人にとっては、

間違いなく「宿題をすること」が目的となります。

つまり「宿題さえやっていればいいんでしょ?」となります。

これは自分から勉強をしようという意識とは正反対の意識です。

往々にして、自分からやろうという意欲を低下させる原因になります。

 

逆に、成績がいい子、伸びる子は、

間違いなく宿題がなくても自分で勉強をする子です。

 

一般によく言われるのは、

成績が悪いのは勉強の習慣が身についていないから、とか、

勉強の方法がわからないから勉強をしない、

というのがあります。

だから、宿題を出して勉強の習慣をつけようとか、

勉強の方法がわかれば勉強するようになる、

と考えがちです。

 

これは、おそらく成績がいい子を見て、

彼らは勉強をする習慣が身についている。

また、勉強法を知っている。

だから、それと同じことをすれば成績が上がるのだろう、

と考えたのでしょう。

それは、至極当然のような気がします。


しかし、そこには大きな誤解があります。

今勉強ができていない子に、

宿題を与えたり勉強法を教えたら

自分から勉強するようになるでしょうか?

リアルに想像してみれが、

そうならないことは明らかでしょう。


成績がいい子がなぜ勉強をするのかというと、

宿題をこなしたからとか、勉強法を教わったから、

ではありません。

それ以前に、

勉強ができる自分、成績のいい自分でいたい、

という思いがあったからです。

だから、自然と勉強をする時間が増え、

結果的に習慣が身についているように見えるだけです。

 

成績のいい子たちは皆そうなのですが、

私自身も中学のときは学年トップをとっていました。

そうなれたのは、勉強の習慣を「つけた」からではありません。

実際、勉強の習慣があったという意識はありません。

ただ、成績のよい自分でいたいという思いがあったから、

それ相応の勉強量を確保していました。

 

そういう思いがないままに、

ほかから勉強させる圧力を加えるのでは、

同じ結果をもたらせるわけありません。

 

ある先輩先生がこういう表現をされました。

「自分で持った鉛筆と、持たされた鉛筆とでは、

どちらが早く動きますか?」

 

自分で持とうと思って持ったのと、

持たされたのでは、鉛筆を持つという行為は同じですが、

もたらす結果には大きな違いがあります。

持たされた鉛筆でした勉強の効果は、

一時的にはあったとしても、絶対に長続きしません。

継続的な学力の向上は望めません。

 

成績を上げるためには、

本人がもっとできるようになりたいとか、

もっといい点をとりたい、

もっと順位を上げたい、

と思うようになることが必要です。

 

それがない状態で勉強をさせるには文字通り強制力が必要です。

強く叱って、叱られる恐怖心を植え付けるなどして、

強制的にやらせるしかありません。

それは私が以前勤めていた塾でさんざんやってきましたが、

その効果はあったとしても一時的なものです。

それだけならまだしも、

強制的にやらせるという行為は、

子どもにとって、無駄なストレスを与え、

勉強=苦役のようなイメージを強化するばかりで、

弊害があまりにも大きすぎる方法です。

相手が、ロボットや家畜ならそんな方法もいいでしょう。

人間相手にする方法ではありません。

 

子どもたち本人が、

理由はどんなものであれ、

「勉強ができる自分」にあこがれることが先です。

それをプロデュースするのが指導者の役目だと思っています。

 

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